弟が宙を見つめ、にやにやしている。
たまに独り言をつぶやき、独りでけらけらと笑っている。
見慣れた光景ではあるが、それを目にするたびに僕は思う。
人はどこまでが人であるのか?
どこまで成り立っていれば人と呼べるのか?
意思疎通を図ることができなってしまった人に対し、どのような手段でこちらの意思を伝られるのか?
己の意思を伝えることができない人に対し、どのような手段で本心を聞き出すことができるのか?
本能に触れることでしか、物事を認識できない人は人であるのか?
誰も答えなど持っていない。
答えのない問答を延々と続けている。
もう考えることも億劫で、すべてを投げ出したくなる。
逃げ出したくなる。
だけど、動くことができない。
もう遅い。
今更、自身の人生を立て直していけるような気力もない。
ゆっくりと沈んでいく舟の上で、今日も動けずにいる。
もう十分頑張ったよ、僕は。
毎日そんな倫理的ジレンマの間で。
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