歌を探しているんだ。
何十年前のものなのか、本当に存在しているものなのかもわからなくて。
悲しい歌だったんだ。
心が締め付けられて、動けなくなって、泣いてしまうような歌。
誰が歌っていたのか、どんなタイトルだったか、歌詞もあやふや。
夢の中で聴いたものだったのだろうか。
メロディもうまく出てこない。
今の僕が求めていて勝手に作り上げている記憶なのか。
可愛らしい声、だけど虚しい歌詞。
綺麗なメロディ。
合成された記憶なのか?
とうとう頭がおかしくなってしまったのか?
幻覚や幻聴を体験している本人にとっては、それは幻ではなく本当に感じていること。
当事者には区別することができない。
記憶もそう。
その時の記憶を共有できる「誰か」がいなければ、
証明する「誰か」がいなければ、本当の記憶なのかどうかわからない。
思い出は独りよがりでは存在できない。
自分が生きているのか、存在しているのかさえ、自分自身で証明することができない。
不確かさ同士が認め合い、お互いを確かなものとする。
「我思う、ゆえに我あり」
本当だろうか?
だけど今は世界中の人たちと瞬時に繋がることができる。
自分を証明してくれる人たちも無数に存在する。
僕があなたを
あたなは僕を
確かなものとしてくれる。
僕は今歌を思い出しながら、誰かが僕を確からしい存在へと導いてくれることを待っているのかもしれない。
その時、やっと思い出の歌を見つけることができるのかもしれない。
僕はあなたを証明する。
約束するよ。
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