篝灯籠

午前3時。

まだまだ眠れないようだ。

血管にこびりついてしまった、甘美な毒はまだ抜け切れていない。

心は落ち着いている。

終わりが見えてきた。

あともう少し。

あともう少しで僕はまた、抜け殻となれる。

蓋をしなければ。

これからはちゃんと隙間を埋めておかねばならない。

こじ開けるものと戦わねばならない。

僕の居場所を守らなければならない。

上手にやるんだ。

今までやってきたことだ。

上手にできる。

今度は上手にできる。

もう何も痛くなどない。

神経はもうない。

聞こえてくるものもない。

味わうものもない。

中途半端ではダメだ。

思いっきりやらなければ。

冬はこれから、まだまだ永い。

春を待つ。

今はじっと春を待つ。

眠らなければ。

冬を越さなければ。

永い冬の夜を耐えなければ。

そして目が覚めた時に迷わず進んでいけるよう、印を刻まねば。

間違えてはいけない。

決して。

今度は上手にやれる。

旧友なんだ。

春に再び相まみえるのは僕がよく知りえた友人。

僕は彼に打ち明ける。

彼はきっと笑って聞いてくれるだろう。

再び諭してくれるだろう。

そして再び迎え入れてくれるだろう。

「おかえり、わかっただろう。」

「見てきたのだろう。」

「味わってきたのだろう。」

「その甘ったれた頭では何もできやしない。」

「自分の無能さを。自分の無力さを。」

「自分の不甲斐なさを。自分の傲慢さを。」

「おかえり、また僕と一緒に暮らしていこう。」

「僕は掛け替えのない、君自身なんだよ。」

僕は何度か首を振り、そして頷く。

言葉で理解しなくとも、心で理解している。

だけど、今は気付いているんだ。

鏡の裏には誰もいないことを。

ただそれでも理解してしまうんだ。

友人のその顔をよく知っている。

最後に祈らせてくれ。

僕が無事そこへたどり着くことができるように。

永い冬を超えた時に迷わずそこへたどり着くことができますように。

もう後戻りなどできなくなっていますように。

もう惑わされることがありませんように。

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